厚生労働省は毎年、地方労働行政運営方針を策定し、公表している。そこで、この内容も踏まえ、あらためて労働基準監督署の役割などについて、説明することにした。
新年度が始まりました。行政機関も多くは年度単位で業務が進められているので、厚生労働省が策定した地方労働行政運営方針を踏まえて、都道府県労働局が事情に即した重点課題・対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、各労働基準監督署では、それをもとに計画的な行政運営を行うこととしています。
運営方針に従って運営されているのですね。
はい、そうなのです。そこで今日は、そもそも労働基準監督署がどのような役割を持っているのか、確認したいと思います。
労働基準監督署の役割ですか。
まずイメージするのは、労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受付を行ったり、これに関する相談対応に当たったり、また、監督指導を行う役所ということではないでしょうか。
確かに36協定届や就業規則の提出先だったり、労働基準監督官が会社にきて労働時間や賃金に関していろいろ指導を受けたりする、といったイメージがあります。実は少し怖い印象があります。一方では、労災保険の窓口というイメージもあります。
そうですね。先ほど、私がお伝えした内容は「監督課」の説明でしたが、業務上においてケガをした場合に労災保険給付などを行う「労災課」もあります。これに加えて、機械や設備の設置に係る届出の審査や、職場の安全や健康の確保に関する技術的な指導を行う「安全衛生課」もあります。労災事故が起こった事業場へ立ち入りを行い、事故が発生した危険な場所に関する指導も担当しています。
幅広い業務をしているのですね。
そういえば、先日、同業者が集まる会合で、同一労働同一賃金に関する調査があったという話を聞きました。これも労働基準監督官が行っているのでしょうか。また、今年度も同様の動きがあるのですか。
同一労働同一賃金は、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法が根拠であるため、これらの法律を担当する役所は都道府県労働局になります。ただし、労働局と労働基準監督署が連携し、2023年11月からは、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の格差の是正に向けて、同一労働・同一賃金制について、労働基準監督署による調査結果を踏まえ、基本給・賞与の差の根拠の説明が不十分な企業等について、文書で指導を行い、経営者に対応を求めるなど、その施行を徹底する」取扱いとしています。
なるほど、そのような動きがあるのですね。
労働局は都道府県ごとに置かれているので47ヶ所ですが、労働基準監督署は全国に321ヶ所あるため、様々な身近な相談が寄せられることになります。そのため、今後は労働基準監督署で同一労働同一賃金に関する課題に係る事実確認が行われ、労働局と連携していくという流れになるようです。
なるほど、労働基準監督署と労働局との連携は強化されているのですね。労働基準監督署の調査があった際には、事前に相談しますね。
※労働基準監督署の組織は、一般的な労働基準監督署の組織を前提に解説しています。
2024年4月から、建設業、トラック・バス・タクシードライバー、医師について、時間外労働の上限規制が適用となりましたが、この中で、建設業とトラック・バス・タクシードライバーについては、厚生労働省と国土交通省が連携をとることになっています。例えば、建設業の人材確保・育成において、厚生労働省と国土交通省とが連携して関係施策を実施することとしています。
■参考リンク
厚生労働省「労働基準について」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。